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自助は、状況に支配されず自己決定で実行(2015年1月号から3月号まで)
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自己決定はなかなか難しいことですが…(2015年4月号から6月号まで)
自己防衛の要は、自助努力です。(2015年7月号から9月号まで)
個人の努力も、集まれば大きな力。(2015年10月号から12月号まで)
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(2015年1月号から3月号まで掲載)
自助は、状況に支配されず自己決定で実行

 改めて、自助をアクティブに考えていただきたいと思います。

 最近の本コーナーは、「高齢化」「少子化」「人口減少」を巡って社会保障のネガティブな話題が続いてきました。現実の状況がそうであるためやむを得ないことではありましたが、なんとか前向きな思考ができないものかと苦慮しました。しかしそれは相当難しいことでした。昨年末の総選挙の結果は、経済政策を維持推進する流れとなり、社会保障政策には変化はなさそうです。「税と社会保障の一体改革」は話題にも上らず、相当期間の好景気が現れなければ年金、子育て、医療、介護等の見通しは楽観できるものではないでしょう。
 好景気の恩恵は、主に年金を収入源とする人たちには簡単には及ばない、むしろインフレによる実質減の影響を受けるであろうとみることができます。被用者の賃金が上がっても簡単には“雫”の恩恵にあずかれない自営業、自由業、農業等の人々の存在に、マスコミがなかなかスポットを当てないことも気がかりです。
 でもそれだけに、前回述べたような「自助をアクティブに考えてみる」ことは、大変重要な前向きの方法であろうと思います。公的扶助が次第に削減される下でも、自助は続けることができます。少なくなっていく若い世代の負担を多数の高齢世代が受け取る賦課方式でなく、自前で原資を積み立て総合的に運用し、やがてそれを加入したときの条件に基づいて終身受給するという、「自助努力・積立方式」の国民年金基金制度の真価が、状況に支配されず自己決定で実行しようとする人たちによって証明されるのだと考えます。

 国民年金基金=2階部分を想定してみましょう。

 サラリーマンや公務員等の被用者年金は、老齢基礎年金(土台) +老齢厚生年金(報酬比例の2階部分)で構成されていますが、自営業、自由業、農業等で、雇用された経歴がない(被用者年金に加入したことがない)人たちは老齢基礎年金のみ、多少サラリーマン期間がある人でも2階部分は少額です。ここに自前で2階部分を組み上げるのが国民年金基金です。
 仮に2階部分を想定してみると……35歳ちょうどの男性が加入し「加入者は終身受給。遺族一時金あり」で掛金限度いっぱいに設計した場合、65歳からの基金の年金月額は10万円。基礎年金(満額を想定)を加えると16万4,400円となります。この場合の基金掛金の月額は6万3,550円です。掛金が高額過ぎると思われるなら、口数を減らして3万1,775円に押さえると基金年金月額は5万円になり、基礎年金と合わせて11万4,400円となります。(被用者年金がない場合。基礎年金の額は平成26年4月以降の満額772,800円から算出) 現実的なイメージを見るために、基金の加入期間を25年と短めに設定して計算しましたが、国はサラリーマン男性のモデル年金の月額を約14万円としていますので、さほど開きがないことがわかります。

 遺族一時金のお話

 上に「遺族一時金あり」と書きましたが、これは終身A型=65〜80歳までの保証期間付き、または確定Ⅰ〜Ⅴ型に加入された場合、保証期間中に亡くなられたときに遺族一時金を支給する仕組みで、受給開始前に亡くなられたときにも支給されます。受給前でも受給中でも掛金の運用が行われているので、どの時点で支給されるかにより金額が変わりますが、詳細説明は紙面上では難しく、直接お問い合わせいただきたいと思います。
 「遺族年金」という言葉をよく耳にされることと思います。これには遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、両者とも条件が複雑なので、ごく簡単に記すと、前者は子が18歳に達するまで等、後者は厚生年金等(2階部分)の75パーセントが、配偶者等に支給されます。国民年金基金の遺族一時金の仕組みは、自助努力を積み上げる人たちのための、遺族年金と共通する役割を担っています。
 かつては死後の問題を口にするのは、不謹慎、縁起でもないとはばかられるものがありましたが、今日では“終活”などの言葉をしばしば耳にし、また“遺品整理承ります”などの看板を見かけたりもします。こういうご時勢なのかと、現実の変化に少々心を痛めながら感じ入るようになりました。
 個人の事情は人それぞれですが、地域には空き家や高齢者の一人暮らしが増えています。昨年の夏に国が公表したデータの中には、老老介護が50%を超えたというものがありました。このような社会現象といやでも向き合っていかなければならない時代には、自分の死後にも一層の思いを致さなければならないのでしょう。
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(2015年4月号から6月号まで掲載)
自己決定はなかなか難しいことですが…

 2階部分があるかないか、これはとても重要な分かれ目です。

 国民年金基金は、「自営業等の人にもサラリーマンの厚生年金のような手厚い給付を……」という願いを実現するために、1991年に法制化され、司法書士国民年金基金は同年8月1日、加入員3,392名で発足しました。
今年1月には累積の加入員が7,000名を突破し、次の目標8,000名を目指して努力を続けています。

 「厚生年金のような手厚い給付を」とは、どんなことかというと……、
 改めて述べるまでもありませんが、国民年金(基礎年金)は20歳〜60歳の国民が全員加入する制度で、厚生年金も公務員等共済組合も、1階部分の基礎年金に2階部分の老齢厚生年金や共済年金などが上乗せされます。 国民年金基金はこれと同じ2階部分です。
 国民年金の被保険者は1〜3号に区分されます。自営業、農業、学生、主婦等の人々は“第1号”、サラリーマンや公務員等は“第2号”、第2号の被扶養配偶者(専業主婦等・無拠出)は“第3号”です。
 平均的事例を基に設定されている年金モデルの月額を、次のように整理してみました。
◆国民年金のみ(1号の人・40年納付)=老齢基礎年金・約65,000円
◆厚生年金(2号の人・40年加入)=老齢基礎年金・約65,000円+老齢厚生年金(2階部分)・約98,000円
◆国民年金のみ(3号の人・40年納付扱)=老齢基礎年金・約65,000円

 司法書士の法人化がそれぞれの年金額の将来にも影響を及ぼします。

 ところで、最近は司法書士の方々の中にも、法人化による厚生年金の適用が増えています。国民年金基金の加入対象(20歳以上60歳未満)の方のうち、約26%の方が厚生年金加入者となりました。
 当然予想できるのは、司法書士界の中でも、将来厚生年金とそうでない方の年金格差が拡大していくであろう、ということです。司法書士になる前はサラリーマンや公務員であった方々もおられますから、単純に分類、比較することはできませんが、国民年金だけの期間が長い方ほど、格差拡大の影響を被ることになります。
 厚生年金の保険料は、給与から算出する“標準報酬月額”に保険料率を掛けて計算されます。現在の料率は17.474%で、2017年以降は18.3%となり、事業主と本人が折半して納めます。厚生年金の加入者は前記のように、老齢基礎年金+老齢厚生年金として受給します。
 これに対して国民年金だけの方は基礎年金のみですが、保険料はいわゆる“天引き”ではないので、自分で納付しなければなりません。基金はさらに“加入は自己決定”するものです。国民年金+基金を厚生年金と比較したら、保険料や掛金と受給額のバランス上の有利不利はさほどではないのに、「任意加入、自己決定、自分で納付等の管理……」それらが、早期加入を躊躇したり先送りをする動機となっているかも知れません。

 早期加入の不安を少しでも解消できるなら……

 これまでも、可能な限り若年のうちに、早期に基金に加入することが理想的、と繰り返し述べてきました。しかし現実には、給与生活者に比べて数年先、十数年先を見通すことは難しく、なかなか加入に踏み切れないということもあるでしょう。でも、次のような実例があります。
 脱サラをして自由業になった数年後、仕事も軌道に乗ってきたので、国民年金基金に加入しました。ところが景気低迷で収入は減少、しかし国民年金の免除を受けるには収入が水準以上、その一方で大きな支出があり、基金の掛金の負担に困り果てていました。思い余って加入基金に相談した結果、「納付猶予」という一時的な措置をとってもらうことになりました。これは2年間で済みましたが、「本当に助かった」と言っています。あれから数年、この方は今年受給開始となりました。猶予してもらった期間の掛金は結局納められませんでしたが……。
 もちろんその期間分は減額されて支給されます。基金としてはあまりお勧めはしていませんが、2口目以降の減口だけではどうにも間に合わないときには、緊急避難的な手段としてこのような仕組みもあるのです。
 超高齢化と少子化は、公的扶助を圧迫します。これまで以上に注意深く、しかも早いうちから自助努力を自己決定することが、ご自身の老後を守ることになります。万全とはいかなくても、少しでも役に立つことはできるはずです。先のことが僅かでも気がかりになったときには、このことを思い出していただきたいと思います。
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(2015年7月号から9月号まで掲載
自己防衛の要は、自助努力です。

 高齢者の地方移住!? 待ったなしの状況に至ったのでしょうか。

 2015年6月、日本創成会議(民間の有識者団体)は、再び衝撃的な予測を発表しました。
 東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県では、急速な高齢化が進み、2025年には介護ベッド数が13万人分以上不足すると推計、対策として、医療・介護に余力がある地方への高齢者の移住を促す、というものです。
 これにはさっそく戸惑い、反発、賛同の声が上がっているようですが、それはとりあえず置いておくこととして……日本創成会議は2014年にも、大都市への人口流出が止まらず東京などへの一極集中が進行、地方はやせ細り、900弱の市区町村(全国自治体の約半数)が消滅する可能性がある、との推定を発表しました。このコーナーでもご紹介しましたから、覚えておられる方も多いでしょう。
 自治体消滅、とはショッキングでしたが、その後この話題が積極的に取り上げられたという記憶は、ほとんどありません。しかし今回の話は「高齢者の地方移住」ですから、マスコミでもお茶の間でも相当リアルな話題となって、これから大いに議論されていくだろうと思いました。もしかすると、前回の反応の鈍さを見てさらに大きな一石が投じられたのかも知れません。
 この話は、「そのうちなんとかなる」「とりあえず先送りして……」はもう通らない、高齢化は待ったなし、という警告なのではないかと思えます。

 マクロ経済スライドによる年金額の目減りが始まりました。

 一方、今年度から年金の支給に「マクロ経済スライド」が発動されました。正確さは欠くかも知れませんが簡単に述べると、従来の物価スライドではなく、物価上昇率に若者世代の減少や平均寿命の延び等を勘案し決定する、というものです。2014年に名目手取り賃金が2.3%上昇しましたが、マクロ経済スライドによる調整率0.9%と、過去に超過支給した年金の今年の解消分0.5パーセントを差し引き、0.9パーセント分が引き上げられます。額面は少し増えますが、実際には“目減り”したことになります。
 少子高齢化は自分には関係がない、関心がない、と思っている人の声を実際に何度も聞きました。でもこの現実はほとんどの人々の上に覆い被さっていきます。
 徐々に仕事をしなくなり、たとえ所得税が非課税になっても、健康保険料、介護保険料、地方税、住民税、消費税、その他各種の税が課税されます。たとえわずかでも、年金の目減りは痛いものです。そしてそれは、これから年月をかけて順々に高齢者になっていく若者世代にとって……まだ実感はないのでしょうが……つらい未来予想図となっています。

 ささやかでも、自己防衛はできます。

 既に年金を受給されている方の例ですが、「毎年初夏に税や保険料の納付書が送られてくると、負担感は年毎にジリジリと増していて、でも、たとえ少額でも国民年金基金の年金が振り込まれているとホッとする」、という切実なお話をうかがう機会がありました。若いうちは実感が薄かったが、あのとき始めておいてよかった、転ばぬ先に決断したささやかな自己防衛だった、とも言われました。
 “国民年金の上乗せ部分”である国民年金基金に加入できるのは、20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者です。受給額は基本的に定額ですが、35歳、45歳、50歳にひとつの区切りがあって、受給と掛金の比では若年での加入がいろいろな点で有利です。
 基金年金の基本額は、35歳までの加入なら、1口目=月額2万円(生涯受給する「終身年金」2タイプ)、2口目以降(増口分。「終身」と「確定」の2種類7タイプ)=月額1万円×口数に、加入月数に応じた額が加算され、65歳から2ヶ月分まとめて隔月に支給されます。掛金は加入時年齢により異なります。
 最近は、ライフプランの多様化に合わせて、受給期間が確定し受給総額が保証される増口分の「確定年金」に関心を示される方がいます。これには65〜80歳、65〜75歳、60〜75歳、60〜70歳、60〜65歳の5つのタイプがあり、いずれも受給総額が万一の場合でも保証されています。2口目以降の増口分として組み合わせますが、一定の条件のもとに、終身型の増口分と合わせて様々な組み合わせができます。
 詳細は当基金のパンフレット『司法書士年金で確かな未来を』をご参照いただきたいと思いますが、個人的なケースやプラン設計についてはさらに詳細な説明をさせていただきますので、どうぞご相談ください。
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(2015年10月号から12月号まで掲載)
個人の努力も、集まれば大きな力。

  とにかく試しにシミュレーションをしてみてください。


 最近のことですが、35歳になる直前に「国民年金基金・A 型」に加入された男性の方がいます。
 掛金を払い終えるのは25年後、受給開始の65歳は30年後です。必要性は感じながらも、先の長い話というのが実感のようでした。将来の受給額は 基本月額2万円(年額24万円)。厚生年金の期間もほとんどなく学生時代の国民年金納付猶予の期間も追納せず……という状況でしたので、増口をお勧めしました。
 基本の1口目の加入の際には掛金表をチェックし、35歳1月からは年金月額が1 .5万円になることを確認したうえで、35歳0月までの2万円のうちに加入を決められました。しかしその後の増口についてはあまり詳しくご覧になっていなかったようで、しばらくして「増口分は1口5,000円なんですか……」と、少々がっかりのご様子。確かに年金月額欄だけを見れば、35歳の誕生月を過ぎると基本額は半額になっています。しかし、「掛金の欄もご覧ください」とお話しすると、納得してくださいました。実は次のような仕組みを見落としていたのです。

A: 34歳1月〜35歳0月の男性の場合、2口目A型の年金月額(基本額)=1万円/掛金額=6,355円
B: 35歳1月〜36歳0月の男性の場合、2口目A型の      〃     =5,000円/〃 =3,335円
(※B2: 35歳1月〜36歳0月で増口をA 型 × 2口にした場合の  〃    =1万円/ 〃 =6,670円)
 ところで、B2 は満60歳になるまでの加入期間、すなわち掛金を払う期間がA より少し短く、さらに加入時年齢に応じた加算額というもので微調整されるので、A との掛金額の差は受給段階で圧縮されます。
 確かに、ざっと眺めてすぐに腑に落ちる掛金表ではないかも知れません。基金の制度が誕生した当初は、もう少しすっきりとしていて分かりやすいものでした。しかし様々な要因の変化等も勘案し修正が加えられ、詳細になった反面、複雑化してしまいました。たとえば女性の掛金は男性より高く設定されていることにお気づきと思いますが、女性の平均寿命は男性より長く、受給期間もそれだけ長くなります。それを数理的に調整すると現在の表のような額になります。
 少しでもご理解を深めていただくため、司法書士国民年金基金では皆様一人ひとり違う個別の状況に応じて、マイプランを試算して提供しています。加入するかどうしようかというケースだけでなく、とにかくシミュレーションをしてみようというご要望でも直ちに試算しますので、お気軽にご相談ください。

  一人ひとりの個人ができる対策から始めましょう。

 「敬老の日」を前に総務省が9月15日現在で推計した65歳以上の高齢者数は約3,384万人。昨年の同じ時期に比べると89万人増えていて、過去最多を更新しました。内訳は、男性が約1 ,462万人、女性が約1,921万人となっています。
 80歳以上は約1,002万人(昨年同時期比;+38万人)、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合も、0.8ポイント増えて26.7%。これらも過去最高となりました。
 一方、5月の「こどもの日」に合わせて同省が発表した15歳未満の子どもの推計人口は、1982年から34年間連続して減少しています。このような超高齢化・超少子化の推移と不安要因の増大について、本コーナーでは毎回のようにお知らせしているので、耳にタコ……うんざりされているかも知れません。
 しかし近年、特に今年は、別の不安が急に増加しているように思えます。
 猛暑に続いて、巨大な台風、津波を思い起こさせる洪水、次々と発表される火山の噴火警戒情報、国内のみならず世界規模で相次いで起こる異常気象と異常災害、大地震等々……。一国一地域にとどまらない安全保障問題や政治や経済、凶悪犯罪や異常な事故にも、心穏やかではいられません。わが国の多くの自治体が消滅するかも知れないという危機への不安等も加えて、思い返せば、対立や激動もあったけれど半世紀以上も概ね平穏な時代が続いてきたような気がします。あの日々は、いったいどこへ行ってしまったのでしょう。
 個人で対策が立てられるだろうかと考えるだけで、心は萎えてしまいそうです。でも、個人でもできるささやかな準備や対策は、ハザードマップを見ることから始めるのと同じようなものです。一人ひとりの自衛の対策が集まれば、一定の効果を生み出すに違いありません。まずはできること、できそうなことから着手していただきたい、そう願うばかりです。
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